明里は怒りんぼだ。

好きだ、と言っても怒るし。
キスしても怒る。
触っても怒るし、抱いたらもっと怒る。

2人きりのとき以外は、確実に。



でも、怒る明里がカワイイ。

地団駄を踏むような足取りとか。
俺をにらみつけるときの、ちょっと上目遣いの目とか。
「もうっ」、って言い方、すげーツボ。

カワイイ。
明里はカワイイ、なんでもカワイイ。





「なぁー、ごめんって、明里ちゃーん」
「もうっ、なんであんな…!」
「だってよ、自慢したいじゃん?見せびらかしたいじゃん?」
「バカっ!」

今日のご立腹の原因は。
俺が彼女の声をこっそり録音して、携帯の着信音にしていたこと。
喫茶店の店内で鳴り響いて、バレた。

「いいじゃん、カワイイぜ?この声」
「そういう問題じゃない!」
「なぁんでだよ!誰も明里の声なんて気づかないって」
「バレるバレないの問題じゃない!もうっ、貸して!」

要さん、と俺を呼ぶ明里の声が、着信音に設定された俺の携帯を。
明里は俺から強引に奪って、俺の手を避けるようにしていじっている。

「何してんだよ、消すなよ、絶対消すなよ!!」

覗き込むと、着メロサイト。
画面は次々と進んで、そして…



うおっ、これは?!



「こうしてやる!バカナメ!!」
「やめろって、おいマジでやめろ!着信音“笑点”にすんの!」
「えいっ!!」
「ああああ!!」

「…勝手に変えたら私の声、消しますからね」

カワイイ。
明里はカワイイ、なんでもカワイイ。
でも、ときに。



そのカワイさは、怖いくらいに残酷だ…。



「炎樹、携帯鳴ってるわよ…」
「あ?ああ…」
「ねえ、前から思ってたんだけど、何で笑点…」
「聞くな、鈴原。聞かないでくれ」





END





お題サイト・リライト様の「組み込み課題・台詞」の1つお借りして書きました。
お借りした組み込み課題:「やめろって、おいマジでやめろ!着信音“笑点”にすんの!」