窓の外、太陽の光がギラギラと輝いている。
天気予報なんか見なくても、今日が真夏日ってことは一目瞭然。
クーラーをつけてもなかなか部屋の中は冷えてくれなくて、私はグラスに入れていた氷を、更に2個足した。
麦茶を注ぐと、かちかちっと、氷がひび割れる音がする。

「暑いですねえ」
「暑いなんてもんじゃねえよ。地獄だ、地獄」

まるで子どもみたいに、フローリングに寝そべった要さんは、だるそうに手で顔に風を送っている。
その姿を横目で見て、思わず笑いをこぼしながら、グラスを2つ、リビングのテーブルに置いた。

「麦茶、飲みません?」
「あー…飲む」
「ここに置きましたからね」

言いながら、先に椅子に座った。
誰の体温も移していないそこは少しひんやりしていて気持ちよかったけど、これも一瞬だろう。
座った傍から、私の体温がなじんでいくのが分かる。

「本当に暑いなあ…」

呟くようにこぼして、麦茶を一口、口に含んだ。



テレビをつけたら、いつの間にか立ち上がっていた要さんが、私の後ろから手を伸ばした。
そして、グラスを手に取り、それを飲み干す。
身をよじってその姿を目に映すと、喉元が綺麗に上下するのが見えた。
思わず見惚れていると、要さんはニヤリと笑った。

「今日は本当に暑いなあ、明里の視線が」
「ばっ、ばか!」

慌てて視線をそらしたら、今度は背中に熱を感じた。
頬に、さらりと要さんの髪の毛の感触がして。
ああ、抱きしめられてるんだ、と思った。

「…要さん、暑い」
「いいじゃん、夏だし」
「イヤです、暑い」
「先に熱視線送ってきたのは明里じゃん」
「うるさいです」

ドキドキしてるのを隠したくて、そっぽを向いたら。
要さんは私から右の腕だけを離して、テーブルに体重を移動した。
そして、身体をよじって、顔を。
私に近づけた。

「明里ちゃーん、いちゃいちゃしたいんですけど」
「い、イヤですってば!暑い」
「じゃあ、下げよう」

私の唇に、自分のそれを重ねながら。
彼の手は器用に、クーラーのリモコンを操作した。
ピピっと音がして。設定温度が、多分2度、下げられた。

「…“地球に優しく”とかってCMしてたの、誰でしたっけ?」
「誰だっけなぁ」
「要さん、でしょ」
「いいんだよ。オレは明里に優しいから」

繰り返されるキスの嵐に、息を詰まらせながら。
要さんを睨んだ。

「本当に、暑いな」
「もう、だから、さっきからそう言って……!」
「でも、」

「でも、この暑さは天国だぜ?」

彼が、ニヤリと笑ったのを見ながら。
きっと今日は、今年一番の猛暑日になるんだろうなあ、なんて。
クーラーの音が大きくなるのを聞きながら、ぼんやりと頭の隅で考える。



ああ、今日は本当に。



暑い、暑い一日。




END