「しっかし、おまえも負けず嫌いだよなぁ〜」

テレビの前。
繋がれたゲーム機が映すのは、色鮮やかなパズルゲーム。
目が少し、しょぼしょぼする。

「だって!一回も勝てないはずない!」
「だからさぁ、オレ、これめちゃくちゃ得意だって言ってるだろ」
「私だって得意だもん」

…頑固。
そして負けず嫌い。
その上、意地っ張り。
こいつのことだから、始めたときからそれなりの覚悟はしてたけど。
カーテンの向こう側は、だんだん明るくなり始めている。

「な、諦めろって。もうそろそろ、夜が明けるぞ?」
「…勝ち逃げするなんて、ズルイ」
「おまえなぁ、起きらんなくなるぞ?」
「大丈夫だもん!」
「分かった分かった、じゃ、次最後な」

ぶーたれるあいつを、なんとかあやして画面に向かう。
真剣すぎる横顔を見て、負けてやろうかな、なんても思うけど。
んなことバレたら更に意地になるのは目に見えてるし、なんだかんだ言ってオレだって負けたくない。

「おっし、じゃあいくぞ」
「…負けないから」
「わりーけど、手加減はしないぜ?」

テレビには、“START!”の文字。
気合を入れて、コントローラを握る。
…すると。



「…かくなる上はお色気殺法で!」



んな声が聞こえて、気づくと、顔面に迫るアイツの顔。
そして、チュッと。
音を立てて、オレの唇が小さく吸われた。

「おっ!おま…!!」
「えへ、スキあり!」

何やってんだ、と焦るオレの隣で。
あいつは着々とパズルを組み立てて。

「へへーん、勝った」

にっこにこで、喜んでる。






「…おまえ、さっきのはズルいぞ?」
「そう?そんなことないと思うけど」

さ、起きられなくなるから寝よ。
あいつは、まだドキマギしてるオレを置いて、さっさと布団に入ってしまった。

「…なあ」
「ん?」
「あんなことして、このまま寝られると思ってんの?」

遅れて入った布団の中。
今度はオレが、小さな桃色の唇を吸う。

「あんだけ付き合ったんだ。今度はおまえが付き合えよ」
「…起きられなくなるよ?」
「勝ち逃げするのか?」

ニヤリと笑って。
オレはオレの、お色気殺法。
そう言って何度も、抱きしめて、唇を重ねる。



そして、オレたちはまた、勝負を始める。



カーテンの向こう。
…夜はもう、明け始めていた。





END





お題サイト・リライト様の「組み込み課題・台詞」の1つお借りして書きました。
お借りした組み込み課題:「…かくなる上はお色気殺法で!」