木枯らしが吹く秋の森林公園。
足下には、がさがさと音を立てる落ち葉。
おまえは嬉しそうに、その上で足踏みしたり、少し蹴ってみたりしている。
「おまえなあ……まるで冬将軍の足音だ」
「え?フユショウグン」
「この寒いのに元気なのは、おまえくらいだって話」
子どもは風の子。
からかうようにぼそっと呟くと、真っ赤な頬が丸くふくらむ。
「もうっ!子どもじゃありません!!」
「そーかぁ?落ち葉を蹴飛ばす大人なんて、どこにいる?」
オレがからかうと、おまえは意地になったように、思い切り宙を蹴った。
そして。
「きゃあ!」
「うわっ」
見事に滑ってバランスを崩す。
オレは慌てて背中に腕を回した。
「あっ…ぶねー」
「す、すみません!!」
落ち葉かぶるところだったな。
笑うと、おまえも少しだけ罰の悪そうな顔をして微笑んだ。
「将軍、お手をどうぞ」
大人しく歩き始めた小さな横顔に、手を差し出す。
「こうしておけば転ばない。思う存分暴れて下さい」
小さな手をぎゅっと握ると、にこっといたずらっ子のような笑顔が返ってくる。
しばらくして、またオレの隣で冬将軍が小さく暴れて。
その足音と、小さな手のぬくもりに、オレは思う。
―ああ、もうすぐ冬が来る。
END