休日のデート。
今朝、天気予報のお姉さんは「今日は今年初めての雪がちらつくかもしれません」と言っていた。
慌てて私は家の中、探し物に走り回る。
出したばかりの冬のコート、マフラー、ミトン。
寒いのは大嫌いだけど、この季節を外でゆっくり楽しまないなんて、もったいなすぎる。
気づけば志波くんはもう、玄関先で待ちぼうけをしていた。
やっとのことで準備を整えて、「ごめん!」と駆け寄る。
着込んだ私にくっと息を詰まらせて、この冬初めての、志波くんの笑顔。
「…笑うことないじゃない」
「毎年すごいな、すげえ着込みよう」
「寒いんだもん」
「まだそんなんでもないだろ」
「冷え性なんです!」
早速、冷たい空気にぴりっと頬が痛み、ポケットの中をさぐった時だった。
重要な忘れ物に、あ、と声を上げる。
「どうした?」
「カイロがない」
「は?」
「ホッカイロ。ちょっと待ってて、とってくる」
あわてて踵を返す私の腕、志波くんが捕まえた。
驚いて振り返ると、にやり、と笑うその顔。
そして腕の手が離されたかと思うと、急に志波くんの両手が私の顔めがけて伸びてきた。
「な、にっ?!」
「…カイロ代わり」
ぽかぽかと、暖かい志波くんの手のひらの温度が、私の頬に移って。
照れくささに「デコピンされるかと思った」とへらっと笑ったら、頬を両側にぐいっと引っ張られた。
「…今年からは、カイロいらずってことで」
歩き出した私たちに木枯らしが吹く。
寒いのは、苦手だけど。
景色はやっぱり、いつも以上に澄んで輝いて見えて、とても綺麗な季節だと思った。
やっぱり、大好きなんだと思った。
初めて当たり前のように手を繋いで歩く、出会って4回目の冬。
END