念のため、確認しておく。

オレと明里ちゃんは、好き合ってるわけであって。
一緒に、暮らしてるわけであって。
つまり…その。
ちょっと前に、結婚なんかもしちゃったわけで。

…でも、彼女が未だにひとつだけ、許してくれないこと。
それは。

「ねえ?なんで着替えるとき、わざわざ隠れちゃうの」
「…だって、恥ずかしいもん」
「何を今更」
「今更って…!」
「だってさ、もう全部見ちゃって……あいたたたっ」

オレの問いかけに、彼女は怒って。
頬をひとつ。
つねってドアを、ぴしゃりと閉める。



いいじゃん。
だってさ、オレとしては見たいわけよ。
彼女が綺麗に、ドレスアップしていくところ。
休日の、たまのデートの日くらい。
朝から楽しませてもらったって、そうそうバチはあたらないと思うんだけど。

(そうだよな、あたらない…よなー?)

そう考えて。
封じられたドアを、コッソリあけて、覗き見る。
大体さ、見るなってもんは、見たくなっちゃうわけで。
特に男なんて、そんな生き物なわけで。

言い訳でいっぱいの頭の中…そこに見えたのは。

先週買ってあげた綺麗なスカートに、通る。
綺麗な、真っ直ぐな足。



「ああ絶景かな絶景かなー」



頷きながら、そう言うと。
飛んでくるのは、彼女が着ていたパジャマと。

「もー! 覗かないで下さい!! 祥行さんのヘンタイ!!」

そんな彼女の、お小言。
大げさに痛がって見せたのに。
オレはまた、あっさりと締め出された。



…しつこいようだけど、結婚して数ヶ月。
やっぱり女の子は、ミステリアスだ。

(だってさ、もう、全部見ちゃってるわけよ?)

新婚色ボケ真っ只中。
オレは心の底から、そう思う。





END





お題サイト・リライト様の「組み込み課題・台詞」の1つお借りして書きました。
お借りした組み込み課題:「ああ絶景かな絶景かなー」