【恋する花屋 −おまけ−】



いそいそと嬉しそうに、花束を持って車に乗り込んだ真咲を見送った、有沢と店長。
駅までの帰り道を歩きながら、二人は少し気まずそうに会話を始める。

「…で?念のため聞くけど、真咲はあの花束を誰に渡すんだ…?」
「店長、それは”言わずもがな”です。あえて口に出すほどのことじゃありません」
「……やっぱりそうだよな」
「………ええ、いつも見ていられないほど、デレデレしてますから」
「でも、本人バレてねえって思ってるもんな」
「そうなんです…真咲君の名誉のためにも、ここは見てみぬふりをしてあげましょう、店長」

「「……」」



呆れながらも、本当はちょっと気になっている二人。
しばしの間沈黙が流れたが、あまりのむずがゆさに耐え切れなくなった店長が、再び口を開く。

「で、でもよ、本当にデレデレしてるよな…」
「……ええ、すごいですよね、本当に…」

有沢も耐え切れなかったのか、笑いをかみ殺したような表情で口を開いた。

「だよな、ありゃ、完璧にやられてるよな」
「…この前なんて、バラの手入れしながら、ぶつかった手に顔を真っ赤にしちゃって…」
「あぁ、俺もそれ見た。あとよ、野宮がバイト休んだ日、野宮のエプロンじーっと見てたぞ」
「いつもですよね……さっきも、窓拭きながら、曇ったところに指で”ゆま”って名前…」

有沢の言葉に、店長がはっと表情を変える。

「有沢!!」
「は、はい?!」

待て、と。
店長が人差し指を掲げ、有沢も口をつぐむ。
そして二人で顔を見合わせた後、小さく何度も頷いてゆっくり視線をそらす。

「…や、やめよう。俺たちさっき、真咲の名誉を守ろうって誓ったばっかじゃねえか」
「あっ…そ、そうでしたよね。いやだ、私ったらつい…」
「まぁ、痛々しくて見てられねえよな。あまりにもバレバレっつーか…」
「そうなんですよ。でも…」

そこまで言うと、二人はほぼ同時に目配せをし。
そして、意を決したように…

「「でも、肝心の野宮さんは気づいてない」」

そう言って、同時に指を突き出し、顔を見合わせる。

「…はぁ、不憫すぎるぜ、真咲…」
「野宮さんも、まんざらじゃないみたいですけど、なにしろ抜けたところのある子ですからね…」



「よし、有沢!ここは俺らが一肌脱いで、イッチョきっかけ作ってやろうぜ!」
「え、い、いいのかしら、そんなことして…」
「だって、このままじゃあまりにもかわいそうだろ、真咲が!」
「…う、うーん」
「なーに、責任は俺が取る!おし、店長命令だ!色々指令出すからな、よろしく頼む」



…そしてこの日から、店長と有沢の”真咲・野宮をにゃんにゃん大作戦”(店長命名)が始まるのであった…。



−完− (なのか、続くのか…)





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※アンネリーの店長さんは、女性だった気がしますね。書いてから気が付きました。
 でも、私はいわゆる「おやっさん」キャラ大好きなので、うちのアンネリーの店長は
 「おやっさん…夢見る44歳・子持ち(4歳の娘。もちろん親バカ)・素敵チョイ悪」
 ってことで一つよろしくお願いします…あ、だめですか…。

 気づけば、サイト初のギャグっぽいお話かもしれません。
 私は書いてて楽しかったですが、読みにくかったらすみません。おまけなので、広い心で受け止めてくださると嬉しいです。
 そして、「にゃんにゃん大作戦」なんていう続編がアップされてたら、笑ってやってくださいね…。
 お読みくださいまして、ありがとうございました!