【白越しに見る幸せ】



冬の並木道を歩くと、毎年思い出すやりとり。



ねえ、志波くん、息が白いよ!
――ああ、知ってる。

ほら、はぁーって!志波くんも息吐いてみて!
――え、やるのか?…オレも?

うん、ほら、早く!
――……はー……。

わぁ、白い!!
――……そうだな…。

しゃべってても白いね!
――…そうだな。白いな。



ふふ、まるで言葉が見えるみたいだね?



あれは何年前だったろう?
懐かしすぎて、指折り数えるには少し遠い。



オレもあいつもっかりいい年になっちまって、白い呼吸にいちいち騒いだりはしなくなったけど。

「ねえ、おとうちゃん!いきがしろいよ!」
「あ…?ああ、そうだな」
「…はーっ!……ふふっ、しろい〜」

並木道を歩くオレたちの間には、オレたちのかわりに騒ぐ小さな姿。

「おとうちゃんも、おかあちゃんも、はーってして?」

その表情は、あのときのあいつにそっくりだ。



3人で、「はーっ!」と声を上げて、息を吐く。
その白さに、小さいそいつは声を上げて喜んで、その隣のあいつは微笑む。

「ふふ、まるで言葉が見えるみたいだね?」

あの時と同じ言葉を呟きながら。



時が過ぎるのとともに。
変わっていくこと、変わらないこと、そして受け継がれていくことがある。

でも、白い呼吸越しに見えた二つの幸せそうな笑顔は、オレにとって一番大切なもの。
これだけは絶対、何があっても変わらないこと。



この大好きな笑顔が。



これからもずっと、変わらずにありますように。





END





>おしいれ
>Back to HOME





※2006年12月の拍手用に準備していたSSです。
 子連れの志波くんというのは許せない!という方もいらっしゃるかなと思い、こちらにアップすることにしました。行き過ぎた妄想ですみません…。
 志波家に生まれるのは、男女どっちですかねー。
 男の子だったら、一緒に野球やキャッチボールをするお父さんになりそうで素敵です。
 女の子だったら、娘に言い寄る男を密かに徹底ガードする父親になりそうでドキドキです。
 甘やかしすぎない、でも、根本的に優しい、いい父親になりそうです。大好きです、パパ志波。(行き過ぎた妄想で…)